制作風景 / 五葉松

とにかくこのボリュームの五葉松(盆栽)制作には、修行めいたものを感じます。 大量の極細ワイヤーを束ねてねじり樹脂でコーティング、すべての角度から枝ぶりを検証し微調整、それが済んだら表面の仕上げ。次にのべ1万本以上の松葉をひたすら粘土で一本一本制作、そして着色。その中から約5千本強をバランスを見ながら選んで枝の先端にピンポイント接着。その後も枝の向きの調整、場合によっては切断して移し替え・・・丸2ヶ月の間これらの作業を繰り返し、完成に至ります。

※(米)カンザスシティ Toy & Miniature Museum 蔵

Hiroyuki Kimura 


■ 鉢および幹の造形 

小作品はともかく大掛かりな盆栽の場合、まず鉢を作りそこに幹を生やしながら造形を進めていきます。理由は?・・・
私にとって単純にそのほうがバランスがとりやすいからです。(笑)
幹は根元からはじまり、おおまかな枝わけにととめておきます。
幹の素材は針金を束ねてねじったものにモデリングペースト、石粉粘土等で表面を固めます。もちろん盛り足したり、けずったりの作業がはいるのは言うまでもありません。



■ 枝の継ぎ足し 

大体の形がとれたら、個別に作っておいた枝を継ぎ足していきます。
あらゆる角度から枝振りを検証し、バランスをとりながら納得のいくまで仮止め・接合を繰り返していきます。



■ 続・枝の継ぎ足し 

引き続き枝を継ぎ足していくのですが、写真を見ていただければ色の違いから、割と細かく継ぎ足しているのがお分かりいただけると思います。
また細かい枝は、後で調整がきくように柔軟性のある樹脂でコーティングし、曲げによる強度をもたせています。



■ あるものは何でも使う・・・ 

他愛のない作業風景ですが、見ての通りその辺にあるものは何でも使うのが自分流。
とにかくすべてが道具です。



■ 続・あるものは何でも使う・・・ 

この光景は私としてはかなりおとなしい方で、ひどい時には壁際に前後2面ある作業テーブル(合計10メートル)がすべて埋まる事も・・・
それはさておき、ある程度まで枝振りが整ったら、この作業はひとまず中断します。
と言うのは、最初から枝をあまり密集させてしまうと松葉を取り付けるのが困難になってしまう事と、後から足りない部分を補うようにした方が最終的なバランスをとりやすいからです。



■ 松葉の取り付け 

このぐらいの枝振りの状態で、別に用意した松葉を全体の下から上に向かって一本一本小枝の先端に放射状になるよう、接着していきます。
松葉はあらかじめ淡い色で着色した樹脂粘土(レジックス)を一本一本針状によってつくります。また五葉松の葉は先端の色が淡くなっているため、さらに一本一本塗り分けます。



■ 続松葉の取り付け 

この作品に使われている松葉は約5000本で、全体を自然にバランス良く仕上げるためには述べ10000本からの松葉を用意します。
松の制作にあたって最も時間を要し、最もつらい作業ですが、松葉の良し悪しが作品のクォリティーを大きく左右しますので、一切気は抜けません。



■ 完成 

松葉の取り付け作業から先は、常に全体のバランスを見ながら、枝を増やす、間引く、向きを変える、松葉を増やす、間引く・・・
これらの作業を繰り返しながらようやく完成へとこぎつけます。

※制作に入るとそれだけに集中してしまいますので、制作過程の写真はめったに撮りませんが、もしかしたら今後増えるかも?(笑)